人の悩みって、昔も今も変わりません。
この本では「仕事」、「自意識・劣等感」、「人間関係」、「恋愛・結婚」。
「人生」、「死・病気」というテーマに関して、哲学者の出した答えを
現代の具体例を挙げながら紹介しています。
偉大な哲学者が残したヒントを参考にし、より良い人生を歩みましょう。
各章において、心に残ったことを紹介します。
仕事について
悩み:忙しい。時間がない
哲学者:アンリ・ベルクソン
毎日が忙しくて、自分の時間が持てない。日々過ごしていくだけで、このまま年老いてしまい、
いつか死んでいくのだろう。
こんな悩みに、フランスの哲学者アンリ・ベルクソンの考えを紹介します。
そもそも、時間とは目に見えないのに、目に見える空間的なものとして捉えているからいけないのだと批判しています。
たとえば、手帳の余白に予定をびっしり埋めることで、人生が充実していると思っていませんか?
ベルクソンは他人との約束や世の中の慣習に流され、スケジュールを入れまくっている現代人の時間の使い方を批判しています。
本当に大切なのは、自分ひとりの時間を濃密に使うこと。
手帳に何も書かず、自分の好きなことをただやることで、主観的な時間の使い方ができるのです。
自分ひとりの濃密な時間を過ごすことで、時間を有効に使えるのではないでしょうか。
自意識・劣等感
悩み:常に漠然とした不安に襲われている
哲学者:トマス・ホッブズ
何をしていても、常に不安を感じている人っているのでしょうかね?
ふとした時に、あれはどうなっていたっけ?程度の不安を感じることは誰にでもありますよね。
今回紹介するのは、イギリスの政治哲学者トマス・ホッブズです。
社会科の授業で、名前を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。
ホッブズが生きた時代は、ピューリタン革命という歴史的事件が起きていました。
「人間の感情で最も根源的なものは、恐怖であり、不安である」とホッブズは語っています。
ただ、これは人間本来の姿であり、こういう状態こそが人間の「自然状態」なのです。
「自然状態」なら、それで良いじゃないか。と、人間本来の性質は周囲にビクビクしながら生きていく事なのです。
ホッブズの語ることは、「臆病でいること」が、生き残るための条件だということです。
不安で頭がいっぱいであることは、むしろ当然なのです。
人間関係
悩み:嫌いな上司がいる
哲学者:バールーフ・デ・スピノザ
人がどうしたら幸せになれるのかについて、「人間が人や世界を恨んだりするのは、人や世界が『自由意志』を持っていると考えてしまうからだ」とスピノザは考えました。
『自由意思』とは、「自分の意思でもって、自分の行動を何とかしようとコントロールできる意思」のことです。
誰も、自分で自分を変えることはできない。自由な意思は存在しないと言っているのです。
決められた運命を変えるような強い意思も能力も、人間は持ち合わせていない。と、そう考えれば全てのことを受け入れられるのだということです。
スピノザの哲学は受け入れる哲学であり、嫌味を言う上司に対して、
彼がそう言うに至る経緯や人生を世界の現れとして、理解してあげることで、
あなた自身の心の平穏が訪れるのです。
恋愛・結婚
悩み:大切な人を失った
精神科医:ジークムント・フロイト
フロイトは大切な人を失った悲しみから、立ち直るプロセスのことを「喪の仕事」と呼んでいます。
また、失われた対象に対する心のエネルギーを「リビドー」と言います。
喪の仕事をする時、このリビドーの抵抗を受けます。喪の仕事が辛いのは、
心のエネルギーである「リビドー」を失った対象に注ぎ続けてしまうからなのです。
しかし、膨大なリビドーを注ぎ続けていても、いつかは長い悲しみから解放され、
「私は生きてきいかなきゃ」と思えるのです。
悲しむことが、癒しの効果を持っているのだと、フロイトの理論を受け継ぐ臨床医の
キューブラー=ロスを証言しています。
人生
悩み:人生の選択に迫られている
認知心理学者:ダニエル・カーネマン
人生は難しい選択の連続ですよね。
簡単な選択から、その後の人生を左右するような選択まで、
日々の中で、悩むことが多いと思います。
結論を言ってしまうと、人間は合理的な判断ができません。
人間は利益についてはより確実な選択肢を選ぶ傾向にありますが、損失については、
リスクを取って、ギャンブル的な選択肢を取ることがあるそうです。
人は選択肢が多すぎると、判断自体ができなくなります。
では、どうすれば良いのか?ですが、
判断を保留することです。場合によっては、他人に判断を任せることです。
カーネマンは直感で即決する思考だけでなく、熟考する慎重な思考が大事と説きます。
判断に迷ったら、粘って自分が納得する答えを探すのも悔いなく生きることなのです。
死・病気
悩み:人生がつらい
哲学者:マルティン・ハイデガー
人生がつらく、死にたいと思った時。
「本気で死を意識したことで、本当の生に目覚めたのである」と、ハイデガーは言います。
人は不意に、漠然とした「不安」に襲われることがあります。
ハイデガーによれば、その不安の正体は自分という存在もまた、いつか死ぬ存在であることを知らせる「死の不安」だというのです。
ハイデガーは「死」とは、だれかが肩代わりしてくれない確実に存在する各自の死であるというのです。
そして、本気の死を捉えた時に、1回限りのかけがいのない自分という存在のあるべき姿をみることができるというのです。
死を本気で意識した時に、人間は人生を生きるエネルギーに変えることができるのです。
死なんて考えずに楽に生きたいと思う人がいる一方、いっそ自分はもう死んだのだと考えることで、やれるだけのことはやろうと前向きに生きることができるのです。
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